日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-9
会議情報

ポスター発表
新生仔マウスにおける卵母細胞シストの形態学的評価
*佐々木 将渡辺 連木村 直子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】多くの哺乳類では,胎仔期に卵原細胞は減数分裂を終了し,一次卵母細胞のシストとなる。その後,母体の急激なホルモン変化を伴う出産前後に卵母細胞シストが崩壊して原始卵胞が形成され,卵巣内に備蓄される。この原始卵胞形成過程の分子メカニズムは詳しく分かっていない。我々は新生仔雌マウスへのオートファジー誘導ペプチドの投与による原始卵胞増加モデルを開発した。本研究では,このモデルにおける卵胞形成に関連した因子の発現動態を調べ,卵母細胞シストを形態学的に評価した。【方法】C57BL/6J新生仔雌マウスに,原始卵胞数がピークとなる生後60時間(h)までオートファジー誘導ペプチド(D11)の連続投与を行い,卵巣を回収した。これらをRT-PCR法により,エストロジェン受容体(ERα, β),抗ミューラー管ホルモンⅡ型受容体(AMHR2),mTOR及びSirtuinファミリーのmRNA発現量を解析した。また生殖細胞特異的マーカーMVH及び基底膜構成成分Lamininを用いて,野生型の単一卵母細胞数,卵母細胞シスト数,シスト内卵母細胞数を評価した。【結果】全てのmRNAの発現は,生後0 h~60 hにかけて増加する傾向がみられた。生後60 hのD11区では,対照区と比べER(α, β),AMHR2及びmTORは低い傾向がみられ,Sirtuin1は区間で差がみられなかった。Lamininは,卵母細胞シスト及び単一卵母細胞の周囲に検出された。対照区では,生後0 h~60 hにかけて単一卵母細胞数及び卵母細胞シスト数は増加し,シスト内卵母細胞数は減少する傾向がみられた。【考察】以上から,卵母細胞シスト数及びシスト内卵母細胞数は卵胞形成の進行の指標となりえ,ERα,β及びmTORがシストの断片化に関与している可能性が考えられた。またAMHR2の増加から,一次卵胞への発育が考えられた。現在,D11区の形態学的評価について進めている。

著者関連情報
© 2018 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top