日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-22
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精巣・精子
ブタ精子の簡易的な形態評価方法に関する研究
*兵庫 夏実村西 由紀秋山 潤子
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抄録

【目的】現在,ブタは人工授精による繁殖管理が主流である。養豚の現場では,人工授精前に精子濃度や精子活性などを測定することによって,種雄豚の受精能力を予測している。精子活性の指標として,精子の運動性の評価は多くの養豚場で行われているが,精子の形態評価はほとんど行われていない。また,ブタの異常精子の特徴をまとめた資料はほとんど存在していないため,この判断は経験や感覚に大きく依存している。一方,ヒトの不妊治療病院の現場では,迅速かつ簡便に精子形態を観察する方法がすでに報告されている(中村ら,2014)。本研究では,このヒト精子の形態評価方法をブタ精子に応用し,新規の精子形態評価方法(簡易凍結無染色法)の確立を検討すること,また,ブタ精子の形態図鑑を作成することを目的とした。【方法】養豚場の種雄豚6頭から精液サンプルを入手し,精液検査(精液量,希釈倍率,生存率,異常形態率,未成熟精子)を行った。簡易凍結無染色法では,希釈精液をスライドガラス上に滴下しカバーガラスをのせ冷凍し,顕微鏡下(400倍)で観察した。200個の精子を2回以上カウントし,その平均から異常形態率を算出した。運動精子を観察する従来の観察方法と簡易凍結無染色法の2つの方法で評価し,異常形態精子の割合を比較した。また観察した異常精子の形態を画像として取得し形態図鑑を作成した。【結果】従来法と簡易凍結無染色法を用いたブタ精子の異常形態率は,簡易凍結無染色法で平均10.75%であり,従来法の10.22%と比べて有意な差は認められなかった(p=0.42)。精子の異常形態として頭部奇形,頸部から尾部における細胞質小滴,尾部奇形などが認められた。簡易凍結無染色法では精子が運動していないため,より形態を観察しやすく,また特別な設備を必要としないことから,効率を重視する現場での評価法として向いていると示唆された。

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© 2018 日本繁殖生物学会
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