日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-53
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卵・受精
体外発生培地へのαリポ酸添加がウシ受精卵の発生におよぼす影響
*横尾 正樹花倉 聡一佐藤 勝祥
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抄録

【目的】生体内で産生されるビタミン様物質であるαリポ酸は,強力な抗酸化作用を有するだけではなく,糖代謝や脂質代謝に重要な働きをしている。本研究では,より高品質なウシ受精卵を作出するために,体外発生培地へのαリポ酸添加がウシ受精卵の発生におよぼす影響について調査した。【方法】食肉処理場由来ウシ卵巣から卵丘細胞-卵子複合体を回収し,IVMD101培地で22時間の体外成熟培養後,精子懸濁液(IVF100培地)中で体外受精した。6時間後,受精卵に付着している卵丘細胞を剥離し,体外発生培地(5%FBS添加CR1aa培地)で発生培養した。発生培養5日目にグルコースおよび異なる濃度のαリポ酸(0,20,100 μM)を添加し,発生培養7~9日目に胚盤胞の発生率および総細胞数を調査した。また,αリポ酸がウシ体外受精卵の代謝機能におよぼす影響を調査するため,発生培養7日目に得られた胚盤胞を用いて,活性酸素種(ROS)の蓄積量,脂肪蓄積量,グルコース取り込み量を調査した。なお,全ての培養は38.5℃,5% CO2,95%空気の条件下で実施した。【結果・考察】胚盤胞発生率は,αリポ酸添加区で上昇する傾向が認められ,特に,より発生の進んだ孵化胚盤胞の出現割合がαリポ酸添加区で有意に高いことが観察された(P<0.05)。発生培養9日目の胚盤胞を構成する総細胞数は,αリポ酸添加区で有意に増加していた(P<0.05)。また,ウシ体外受精卵のROS蓄積量および脂肪蓄積量は,αリポ酸添加区で有意に減少することが確認された(P<0.05)。αリポ酸は受精卵のグルコース取り込み量に影響は認められなかったが,αリポ酸による発生促進効果はグルコースを添加した場合に増大していたことから,受精卵の糖代謝を促進することが推察された。以上のことから,体外発生培地へのαリポ酸添加は,ウシ体外受精卵における糖・脂質代謝の促進,ROS蓄積を抑制する効果によって,ウシ体外受精卵の発生能を改善することが明らかになった。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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