日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-23
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内分泌
オスラット由来の嗅覚刺激によるメスラット前腹側室周囲核(AVPV)キスペプチンニューロンの活性化およびLH分泌の増強作用
*渡辺 雄貴石垣 蓮池上 花奈家田 菜穂子上野山 賀久前多 敬一郎束村 博子井上 直子
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抄録

【目的】メスのラット,ヤギ,ヒツジにおいて,オス由来の嗅覚刺激により黄体形成ホルモン(LH)分泌が増加することが知られており,これはオスの存在下での排卵をより確実にするための現象のひとつと考えられる。嗅覚刺激は,嗅球や扁桃体を介し視床下部に入力すると考えられているが,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ひいてはLH分泌促進に至る神経経路は明らかにされていない。そこで本研究では,キスペプチンニューロンに着目し,オスラット由来の嗅覚刺激がメスラットの同ニューロンの活性化を介してLH分泌を増加するか否かを検討した。【方法】Wistar-Imamichi系統成熟メスラットを卵巣除去し,高濃度エストロジェン処置を施した。オスラットを1週間飼育したケージからオスラットを取り除いた後,同ケージへメスラットを移し(オス床敷曝露),その1時間後に,メスラットの脳を採取した。Kiss1(キスペプチン遺伝子)またはGnrh(GnRH遺伝子)のin situ hybridizationとc-Fosタンパク(神経活性化マーカー)の免疫組織化学の二重染色によりそれぞれのニューロンの活性化を検討した。さらに,同様の処置を施したメスラットを用い,オス床敷への曝露後から1時間間隔で8時間採血し,LHサージへの効果を検証した。【結果および考察】オス床敷を曝露したメスラットの前腹側室周囲核(AVPV)においてc-Fosを共発現したキスペプチンニューロン数は,未使用床敷曝露対照群と比較し,有意に増加した。一方,c-Fosを共発現したGnRHニューロン数は,オス床敷曝露群と対照群間で有意な差はみられなかった。またオス床敷曝露開始直後より,メスラットにおける血中LH濃度が増加し,曝露開始から8時間までのLH濃度曲線下面積およびLHサージのピーク値は対照群と比べ有意に高かった。以上の結果より,オスラット由来の嗅覚刺激は,メスラットAVPVのキスペプチンニューロンを活性化させることによりGnRH/LHサージを増強する可能性が示唆された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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