日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1B13
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一般演題
手術室におけるクリ二カルパス・フォーカスチャ-ティングの有効性の検討
金山 智美藤巻 真理子江口 和江森岡 宣伊
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キーワード: クリニカルパス, 手術中
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抄録

はじめに  当院では1998年より、サマリー形式の看護記録を使用して看護を展開してきました。しかし、この方法では記録内容に重複する部分が多く、記録に要する時間には個々の経験により差がある等、使用に際して問題があります。 日本看護協会では、記録とは必要な看護情報を効率よく利用しやすい形で記録する必要がある。と報告しています。そこで、現在使用している看護記録用紙の問題点を改善するにあたり、クリニカルパスとフォーカスチャ―ティングを取り入れた記録用紙を作成し、使用してみて、その時間短縮という視点から有効性を立証できたので報告いたします。 研究方法 1.研究期間  平成17年12月~平成18年7月 2.研究方法   1)クリニカルパスとフォーカスチャーティング形式を取り入れた新しい手術室看護記録用紙の作成をおこないました。 2)手術室スタッフへのクリニカルパスとフォーカスチャーティングに対する勉強会の開催を行いました。 3)当院手術室における腰椎麻酔下での帝王切開手術があった場合に、その手術の麻酔看護及び記録に携わった手術室看護師(9名)に新しい看護記録用紙を使用してもらい、時間の測定を行い、新旧用紙での時間の比較を行いました。その後 面談方式で自由に述べてもらうアンケートを実施しました。            結果 1.前記録用紙と新記録用紙の記録に費やした時間の比較です。 旧記録用紙695.3±163.6秒 新記録用紙360.8±47.1秒  P値は0.003 2.面談形式でのアンケートの結果は 時間が短縮された・・・71% 観察項目が明確で看護のレベルが統一されている・・・43% 経時的な軸で患者を観ることが出来る・・・43% 病棟への申し送りがしやすくなった・・・43% 考察 以前の使用していた記録用紙で記載に時間が掛かった理由は、看護問題が記録用紙の両面にわたって書かれているために、記載する際に、用紙を何度も裏返すという動作が伴ってしまうことが大きな障害となっていました。加えて、サマリー形式での看護記録であるため、問題発生時の記録の記載が、担当看護師の主観的な判断で記載する場所が異なってしまい、記載内容にも統一感が持てません。手術中においても、1つの処置に関連して問題が連鎖して起こることがあるため、以前の記録用紙では記載内容、記載場所が重複してしまいます。新しい記録用紙では、前述した問題点の解消に焦点をしぼり、書籍を参考にして作成しました。その結果、新しい看護記録用紙では1つの紙面での記載が可能となり、記載項目を具体的にチェックリスト方式にし、文章化する手間を省きました。これらの改善点が記載に掛かる時間の短縮につながったと思われます。しかし、全く新しい用紙での記載に関して、今回事前学習時間が少なかったため、スタッフ各自のクリニカルパスに対する理解度も、解釈も異なったこと。また、フォーカスチャーティングという新しい記載方式に対しての抵抗感を持つスタッフがいたことも事実であり、今後の改善課題です。そして、記録の個別性に対する疑問などもあり、今後の課題としてクリニカルパスのバリアンスコードの作成や、フォーカスチャーティングの勉強会を開き、各自の意志を記録に反映させられるようなフォーマットが必要と考えられます。また、申し送りがしやすく統一性があることが大きな利点であることもわかりました。今回は手術室スタッフのみの意見調査となりましたが、術中に残された看護問題を、病棟での継続看護に生かせるよう、病棟看護師の意見調査も行い、継続看護も視野に入れた記録用紙の作成も今後必要となると思われます。それに伴い、患者様の個別性を生かした看護を記録に反映できるように、術前・術中・術後を1つの時間の枠組みとしたクリニカルパスの検討を踏まえ、現在行っている術前訪問の問題点も統一化し、見直す必要性があると思われます。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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