日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-2
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シンポジウム17: ゲノム不安定性をみる~遺伝毒性研究のホットトピック~
遺伝毒性試験をプラットフォームとしたエピジェネティック作用評価法の開発
*佐々 彰
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抄録

ゲノムDNAに対する外因性及び内因性の化学物質の曝露は、DNA損傷形成を起点とした遺伝子突然変異や染色体異常から、エピジェネティックな制御を担うDNAメチル化・ヒストン修飾の変動まで多階層の分子変化を誘発する。DNAに直接あるいは間接的に作用して損傷を引き起こす化学物質のスクリーニングには、国際的に標準化された遺伝毒性試験法が利用されてきた。本研究では異なる階層の変化であるエピジェネティックな作用を簡便かつ定量的に評価することを目的として、in vitro遺伝毒性試験法をプラットフォームとした新規試験法の開発を行った。そのために遺伝毒性試験株であるヒトTK6を基盤に、CRISPR/dCas9-DNMT3Aシステムによって内在性TK遺伝子座のプロモーター領域をメチル化したmTK6細胞株を樹立した。TK遺伝子プロモーターにおけるCpG領域のDNAメチル化レベルは双方向に可変であり、エピジェネティックな作用を柔軟に検出可能であることが予想された。実際に、TK遺伝子をレポーターとした遺伝子突然変異試験の原理を踏襲して、被験物質暴露後のTK発現復帰コロニー数の変化からエピジェネティック作用を定量することに成功した。すなわち本試験法を利用することで、標準化された方法で高価な解析機器を利用することなく、簡便にエピジェネティックな影響の評価が可能となる。本講演では、確立した新規試験法を利用したエピジェネティック作用の検出、およびエピゲノム制御機構解明に向けた可能性について議論する。

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