日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-2
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シンポジウム12: 法中毒学の教育・研究における新たな潮流と毒性学との連携
歯科法医学の死因究明における役割と歯に認められる中毒物質について
*山田 良広
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抄録

歯科法医学は1988年に東京帝国大学で開講された法医学における「個人識別」に特化した学問として1964年に東京歯科大学に設立された比較的新しい研究分野である。 死因究明等推進基本法は令和2年4月に施行された,死因究明等(死因究明及び身元確認)に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって安全で安心して暮らせる社会及び生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に寄与することを目的とした法律である。歯科法医学は,同法の基本的施策の一つである身元確認のための死体の科学調査の充実及び身元確認に係るデータベースの整備を担当している。 歯による身元確認は,身元不明死体の口腔内所見を肉眼とエックス線写真で採取して死後デンタルチャートを作成する。一方で状況などから予想される人の生前歯科資料を,受診していたかかりつけ歯科医院に保管されている診療録とエック線写真などを借り受け,生前デンタルチャートを作成し,死後生前の2つのデンタルチャートの比較照合を行い,所見の一致した場合は肯定,不一致の場合は時間経過などを考慮して矛盾する所見か否かを判断,最終的に同一人の可能性を判断する。この作業は古くから行われているが,最近では口腔内写真のデジタル化や感染対策の徹底などを目的として機材の開発や改良が精力的に進められている。また,生前データベースの構築として,診療録の内容を登録する事業が進められている。本シンポジウムでは歯科法医学の独自性と身元確認の方法を実際の鑑定例を含めて説明する。さらに,身元確認には歯に見られる中毒物質の発現も有効であり,飲料水中に高濃度のフッ素が含まれる地域で見られる斑状歯や,歯の形成期にテトラサイクリン系抗生物質服用することによる歯の着色などが代表的であり,これらはTooth Wearと呼ばれている。

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