日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-222
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一般演題 ポスター
3価クロムの長期処置がHepG2細胞のPPARγとエリスロポエチン産生に及ぼす影響
*西村 和彦吉本 あかりMd. Anamul HAQUE中川 博史
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抄録

3価クロム(Cr)はサプリメントとして長期間摂取されることがあるが、その効果については見解が一致しておらず、長期間曝露の影響についての解明は進んでいない。我々は以前、HepG2細胞においてCrの24時間処置によってPPARγが増加し、エリスロポエチン(EPO)産生が促進すると共に、インシュリン抵抗性獲得が阻止されることを報告した。EPOには赤血球産生の促進以外に、細胞保護作用を始め様々な作用が報告されている。しかし、HepG2細胞が長期間Crに曝露された時、PPARγやEPO産生にどのような影響があるのかは不明である。そこで本研究は継代しながらCrを4週間以上処置したHepG2細胞において、PPARγやEPO産生への影響を解析した。Cr処置によって8週までPPARγ mRNA発現量は有意に高く維持された。一方PPARα mRNA発現量には変化がなかった。EPO mRNA発現量もCr処置8週まで有意に高く維持された。Cr処置4週目における低酸素状態やコバルト添加によるEPO産生刺激に対するEPO mRNA発現の増加量は無処置に比べて低下したものの、発現量自体は通常細胞を刺激した場合と差はなかった。また、PPARγの阻害はCr処置4週目でもEPO mRNA発現を抑制した。PPARγはEPO産生だけでなく様々な調節に関わっており、それらの因子はEPO産生にも影響すると予想される。リポポリサッカライド(LPS)投与や酸化ストレスとなるピオシアニン投与はEPO産生を促進するが、Cr処置細胞ではその作用が減弱した。これらの結果から、Crの長期間処置においてPPARγ産生の増加は持続し、それによるEPO産生の増加も維持することが示唆された。PPARγの作用の増強により、EPO産生も増強されたままであるが、LPSや酸化ストレスによるEPO産生増加の応答性は低下していることことが示唆された。

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