日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-037E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 2
マウスにおけるブレオマイシン選択的気管内投与による肺病変の分布解析
*日吉 貴子西銘 千代子西中 栄子浦野 浩司山本 大地鈴木 雅実
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抄録

【背景】疾患モデルのひとつとして、化合物の暴露により臓器障害を惹起するモデルが広く用いられている。暴露方法として様々な局所投与方法が開発されており、化合物誘発性肺障害モデルの作出には気管内投与が利用されている。投与方法開発初期には、気管への投与が主流であったため左右の肺にランダムに病変を誘導していたが、小動物用気管支鏡の開発により、左右肺への選択的投与が可能となった。

【目的】マウスの肺は左右で分葉状態が異なることより、左右肺選択的暴露の特徴を明らかにするために、ブレオマイシン(BLM)をモデル化合物として選択し、肺障害の分布と炎症から線維化に至る過程を病理組織学的に比較解析した。

【方法】8週齢のC57BL/6JJclマウスに、BLM(6 mg/mL)を20 µL、細径内視鏡を用いて左右肺に選択的に投与した。投与後、毎日の一般状態の観察とともに、週1回体重を測定した。投与後7日、14日、28日に安楽死処置により肺を採取し、病理組織学的に解析した。

【結果・考察】体重は、投与後7日に一過性に減少し、その後は増加傾向を示した。頻呼吸等の一般状態の変化は観察期間を通じて認められなかった。病理組織学的解析では、左肺にBLMを投与した群では、個体差が少なく、葉全体に均一に線維化を含む炎症像が観察された。一方、右肺にBLMを投与した群では、炎症像が観察されたものの、右肺の葉間(前葉、中葉、後葉、副葉)の病変分布に個体差がみられた。肺葉構造、気管支分岐など解剖学的特徴から、右肺では各葉への暴露が不均一となった。一方、左肺では、単葉であるため葉全体が暴露されやすく、個体差の少ない均一なモデルを作製できた。また、片肺への選択的投与では、非暴露肺が機能するため、重度の肺障害の惹起によるモデル化も可能と考えられた。

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