日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S44-6
会議情報

シンポジウム44
医薬品による重症薬疹の発症機序と発現予測
*斎藤 嘉朗荒川 憲昭塚越 絵里中村 亮介
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 医薬品の副作用発現要因としては、医薬品の特性と患者の特性の両者がある。後者の寄与率が大きい医薬品では、概して非臨床段階での発現予測は難しく、これらは「特異体質性」の副作用と呼ばれる。一般に、非臨床段階での予測には、発現機序に基づく適切な動物モデルやin vitro評価系の構築が重要である。

 特異体質性の副作用の中でも重症薬疹は、医薬品の被害救済制度において、救済数が最も多く問題となっている。2004年に台湾よりカルバマゼピンによるスティーヴンス・ジョンソン症候群発症にHLA-B*15:02アレルが非常に強く関連している事が報告されると、多くの遺伝学的な関連解析の結果が報告されるようになった。現在までに、我々の知見を含め、アロプリノール、サルファ剤等の十種程度の医薬品で、関連するHLA型が報告されており、免疫学的な機序の関与が示されている。またフェニトインでは、解毒代謝酵素CYP2C9の活性低下型遺伝子多型との関連も報告されており、医薬品の血中濃度上昇との関連も示唆された。重症薬疹の初期発症機序としては、医薬品分子のHLA分子やT細胞抗原受容体への非共有的直接結合による提示(p-i concept)等、3種の概念が提唱されている。またこの提示を認識するT細胞受容体のタイプに関しても、複数の報告がある。さらに皮膚傷害を起こす分子として、細胞障害性T細胞が放出するグラニュライシン等が知られている。また表皮細胞が壊死する機序としては、好中球から放出される抗菌ペプチドLL-37による表皮細胞のformyl peptide receptor 1(リガンドはAnnexin A1)の発現誘導と、これを介するネクロプトーシス(プログラムされたネクローシス)の関与が明らかになっている。

 本講演では、将来の非臨床段階での発現予測に向けた見通しを含め、最新の重症薬疹研究を紹介する。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top