日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-72S
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メチル水銀誘導性神経毒性メカニズムにおける小胞体ストレス応答の寄与
*野村 亮輔熊谷 嘉人藤村 成剛上原 孝
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抄録

【背景・目的】

 水俣病の原因物質として広く知られているメチル水銀(MeHg)は神経細胞死を誘導し,特定の組織領域を障害することが報告されている.しかし,細胞死に至る詳細な分子機構に関しては未だ不明な点が多く残されている.当研究室ではこれまでに,MeHgによる小胞体(endoplasmic reticulum:ER)ストレス惹起によってアポトーシスが誘導されることを細胞レベルで明らかにした.マウスを用いた検討から,MeHgによって大脳皮質および線条体においてERストレスが惹起されることを証明してきた.ERストレスはunfolded protein response(UPR)を介して,軽微な場合はストレス軽減に,重度の場合はC/EBP homologous protein(CHOP)などの誘導を経てアポトーシスを引き起こすことが知られている.そこで本研究では,MeHg誘導性神経細胞死におけるERストレスおよびUPRの関与について検討した.

【方法】

 マウス脳内における小胞体ストレス惹起の検証には,ER stress activated indicator(ERAI)遺伝子を導入したERストレス可視化マウスを使用した.7週齢の本マウスにメチル水銀を慢性曝露(飲水投与)させ,採取した脳切片を免疫組織化学的手法により検討した.

【結果・考察】

 ERストレス可視化マウスにMeHgを曝露させた結果,大脳皮質体性感覚野においてアポトーシス陽性細胞の増加が観察された.また,アポトーシス陽性細胞についてERストレスおよびUPRの関連性を検討したところ,ERストレス陽性神経細胞においてCHOPの発現が観察された.さらに,本細胞はTUNEL陽性であることが認められた.以上より,マウスにおいてMeHgの曝露はERストレス―UPRの活性化を介して大脳皮質体性感覚野の神経細胞死を惹起する可能性が示唆された.

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© 2022 日本毒性学会
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