日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-256
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化審法のリスク評価(一次)評価Ⅰでの発がん性定量的評価のために求められる変異原性評価のあり方:閾値の有無に関する再検討
*牛田 和夫井上 薫甲斐 薫山下 ルシア幸子鈴木 洋広瀬 明彦
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抄録

化審法のリスク評価(一次)評価Ⅰでは、優先評価化学物質の発がん性について可能であれば定量的評価を行うこととなったが、そのためには一定のルール通りに行ってきた変異原性の評価結果を見直し、発がん性の「閾値の有無」を判断しなければならない。そこで、暫定ルール(Ames試験 及び/またはin vivo試験陽性)により「閾値なし」とした8物質を対象に、遺伝毒性情報を精査し、特に陽性結果の妥当性を確認した。

その結果、メチルアミンは、陽性であったラット優性致死試験の信頼性が低く、Ames試験が陰性であったため、2,2',2"-ニトリロ三酢酸のナトリウム塩は、染色体異常試験の陽性は異数性異常のみを示し、異数性やコメット試験の陽性結果は本物質のキレート作用による間接的メカニズムの関与が考えられたため、変異原性なし(発がん性の閾値あり)と判断した。

一方、他の6物質については、以下の理由により変異原性あり(発がん性の閾値なし)とした。ブロモメタン:Ames及び小核試験の陽性結果は妥当;1,2-エポキシブタン:in vivo試験は染色体異常がエンドポイントの陰性結果のみでAmes陽性結果を否定できない;エチレングリコールモノメチルエーテル:優性致死試験は信頼性が低いものの陽性結果を否定できず、かつコメット試験(骨髄)が陽性;1,4-ジオキサン:発がん標的である肝臓にて高用量でin vivo小核及びTGR試験が陽性;ε-カプロラクタム:マウススポットテストの陽性結果は突然変異誘発性の可能性を否定できない;二塩化酸化ジルコニウム:骨髄染色体異常試験は信頼性が低いものの陽性結果を否定できる根拠がない。

以上より、物質によっては閾値の有無の暫定判断が覆る結果となったことから、評価Ⅰでの発がん性定量的評価のための変異原性評価は、従来通りではなく、試験の信頼性や発現機序等を精査して行う必要性が高まった。

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