日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-239
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ヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞の特性と病態モデルとしての有用性
*美馬 伸治今倉 悠貴山﨑 奈穂望月 清一猪又 晃岩尾 岳洋松永 民秀遠藤 摂永田 幸三
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抄録

【背景】小腸は、食品や医薬品の吸収・代謝を担う消化器官としての役割に加え、クローン病など炎症性腸疾患の好発臓器としても知られている。現在、代替モデルとしてCaco-2細胞や実験動物が用いられているが、各種代謝酵素/トランスポーターの発現量の違いや種差により、ヒト生体小腸との外挿性が低いことが問題となっている。そこで我々はヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞(F-hiSIEC)を開発し、この細胞を用いてヒト生体に近い性質を有するin vitro細胞アッセイモデルの構築を試みた。

【方法】既報(Kabeya, et al. Drug Metab. Pharmacokinet. 2020)を基に、ヒトiPS細胞から腸管上皮細胞への分化誘導方法を確立した。開発したF-hiSIECTMについて、種々の特性を評価した。

【結果】F-hiSIECは、トランスポーター及び代謝酵素のmRNA発現がヒト小腸とほぼ同等であり、主要なトランスポーターや代謝酵素について安定した活性を示した。また、本細胞は、腸管上皮に存在することが知られている杯細胞・内分泌細胞・M細胞等などを含んでいた。そこで、F-hiSIECに存在するM細胞の機能を評価したところ、管腔側から血管側へ粒子の移行が観察され、M細胞が機能していることが示された。

次に本細胞を用いて炎症性腸疾患モデルの検討を行った。血管側に炎症性サイトカインを添加し培養すると、経上皮電気抵抗値とMUC2の発現量が低下し、各種炎症性サイトカインの発現量が増加した。また、炎症を抑制することが知られている腸内細菌代謝物を管腔側に併用したところ、上記の炎症反応が抑制された。

【結論】本細胞はヒト小腸に近い性質を有し、M細胞を介したナノ粒子、マイクロプラスチックの吸収やIBD、リーキーガットのヒト小腸in vitroモデルとして、有用なツールとなることが期待される。

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