日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-26
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一般口演
小笠原諸島固有種における抗凝固系殺鼠剤に対する感受性試験
*小出 将士安平 芙由一瀬 貴大小田谷 嘉弥鈴木 創堀越 和夫池中 良徳石塚 真由美中山 翔太
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抄録

独自の生態系を持つ小笠原諸島では、クマネズミ等の外来種による生態系攪乱が問題となっており、抗凝固系殺鼠剤の散布による対策を行っている。抗凝固系殺鼠剤はビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKOR)に作用し血液凝固系のビタミンKサイクルを停止させ、全身からの出血を引き起こすことで標的を死に至らしめる。齧歯類による感染症媒介の防除等を目的として広く使用されている抗凝固系殺鼠剤であるが、非標的動物が殺鼠剤を直接摂取することによる一次曝露、および殺鼠剤により死亡した齧歯類を上位捕食者が摂取することによる二次曝露が大きな問題となっている。したがって抗凝固系殺鼠剤の使用にあたっては、対象地域に生息する他の種にとってそれが脅威となり得るかを慎重に検討する必要がある。特に小笠原諸島には、近年急速に個体数を減らしているオガサワラカワラヒワ(Chloris kittlitzi)やオガサワラオオコウモリ(Pteropus pselaphon)といった絶滅が危惧される固有種が生息しており、殺鼠剤への一次曝露が懸念されるこれらの種において感受性評価を実施することは重要な意義を持つ。

本研究では小笠原諸島での殺鼠剤散布が固有種に与える影響を評価することを目的とし、オガサワラカワラヒワの姉妹種であるカワラヒワ(C. sinica) およびオガサワラオオコウモリの肝臓から抽出したミクロソームを用いて、抗凝固系殺鼠剤であるワルファリン(WF)に対するin vitroでの感受性試験を行った。代謝試験の結果として、カワラヒワではWFに加えてその水酸化体である4’-、6-、8-OH-WFが、オガサワラオオコウモリでは4’-と6-OH-WFがそれぞれ検出され、これらの物質への代謝が行われることが示唆された。今回のWF代謝試験に加え、現在VKOR阻害試験を実施しており、より詳細な殺鼠剤感受性評価を行っていく予定である。

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