日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-130
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ポスターセッション
強心配糖体ウアバインのアグリコンであるウアバゲニンはSREBP-1を増大させないLXRアゴニストである
*藤野 智史杉崎 航太大川 紗生藤川 彩菜大嶋 利之早川 磨紀男
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抄録

【背景】強心配糖体ウアバインのアグリコンであるウアバゲニン(OBG)は、腎臓において核内受容体LXR-betaを活性化して降圧作用を示す。興味深いことにOBGは、LXRアゴニスト特有の脂肪肝を起こさないが、その機構は不明である。肝臓における脂肪酸生合成にはLXR-alphaによるSREBP-1cの発現増大が関与することから、OBGが脂肪肝を起こさない要因として、OBGがLXR-betaを優位に活性化する可能性も考えられた。しかし、我々は腎細胞において、LXR-beta がLXR-alpha の発現を増大させることを見出しており、肝細胞においても同様であれば、内在性のLXR-alphaアゴニストによるSREBP-1cの発現増大作用を増強することになり、脂肪肝を起こさないことと矛盾する。そこで今回、肝細胞におけるLXRサブタイプ間の相互発現調節について検討し、OBGが脂肪肝を起こさないメカニズムを探索した。

【結果・考察】ヒト正常肝細胞株Fa2N-4 においてLXR-alphaを高発現させ、OBGおよびLXRアゴニストGW3965で処理したところ、いずれの場合もLXR-betaの発現が同程度に低下したことから、OBGはGW3965と同様にLXR-alphaを活性化すると考えられた。一方、LXR-betaを高発現させ、OBG、GW3965で処理したところ、いずれの場合もLXR-alphaのレベルが増大したが、増加度はOBG処理の方がGW3965処理に比べ劇的に大きかった。しかし、脂肪酸生合成酵素の制御因子であるSREBP-1cの発現レベルはGW3965による劇的な増大とは対照的にOBG処理では僅かな増加にとどまった。さらに、OBGは、LXRによるSREBP-1c活性化の抑制因子であるKLF15の発現を増大させることが明らかになったことから、OBGは、LXR-alphaとLXR-beta の双方を活性化するが、抑制因子KLF15を増大させることにより、SREBP-1cの発現増大にブレーキをかけると考えられる。

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