日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-11
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口演
2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin次世代毒性の予防:児の性未成熟に対するα-リポ酸の回復効果
*袁 鳴佐野 宏江西田 恭子古賀 貴之武田 知起田中 嘉孝石井 祐次
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抄録

【目的】当研究室では、2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)への母体曝露は、性腺ステロイド産生の主要な調節因子である周産期の下垂体における黄体形成ホルモン(LH)の産生を減弱させること、また、TCDDに曝露された妊娠中の母体へのα-リポ酸の補給は、減弱したLHおよび 臨界期の性腺ステロイド産生を正常レベルまで回復させる事実を見出している。したがって、α-リポ酸の補給は、TCDD母体曝露によって誘発される雄児の性分化および性成熟の遅延に回復効果をもたらすことが期待される。本研究では、雄児の性分化の指標である視索前野の性的二型核(SDN-POA)の体積を評価した。

【方法】妊娠15日目のラットには、TCDD(1 µg/kg)を経口投し、コントロール群にはコーンオイルを投与した。コントロール群とTCDD投与群の両方をさらにそれぞれ2つのグループに分けた。これらコントロール群の1つとTCDD処理群の1つには、α-リポ酸による介入を行った。すなわち、TCDDまたはコーンオイル処理を行う当日の朝から、出産後21日目まで0.35% α-リポ酸を含む飼料を与えた。新生児サンプルは出生後28日目で採集し、共焦点顕微鏡を用いて視床下部に存在するSDN-POAの体積を評価した。

【結果及び考察】TCDD母体曝露により、神経の成熟が完了する時期である出生後28日目の雄児ではSDN-POAの体積が大幅に減少した。一方、このような減少は、α-リポ酸補給群では観察されなかった。さらに、コントロール群にα-リポ酸のみを適用した場合は、SDN-POAの体積が増加する傾向があった。これらの結果は、TCDDに曝露された母体へのα-リポ酸補給が、雄児の脳の性分化への障害に回復効果を及ぼすことを示唆している。

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