日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S31-5
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シンポジウム31
再生医療に用いられる細胞加工製品の遺伝的不安定性評価と安全性評価
*佐藤 陽治
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抄録

 細胞加工製品に特有の安全性関連リスクの一つとして、製品中に発生する形質転換細胞に起因する腫瘍形成のリスクがある。遺伝的不安定性の増大は、核型異常や遺伝子変異の発生確率を上昇させることを通じて形質転換細胞の発生確率を上昇させると推定されることから、腫瘍形成リスクに関する潜在的ハザードである。ただし、in vitroで検出される核型異常細胞などの遺伝子変異を持つ細胞の臨床投与時の安全性に関してはまだ世界的コンセンサスはない。したがって、ハザードである遺伝的不安定性を最小限にするために培養期間及び継代回数を制限し、培養条件の方法や変更の影響に対するリスク評価を行うことが基本である。

 薬機法下の再生医療等製品に関する通知「ヒト細胞加工製品の未分化多能性幹細胞・形質転換細胞検出試験、造腫瘍性試験及び遺伝的安定性評価に関する留意点」(薬生機審発0627第1号別添 令和元年6月27日)および再生医療等安全性確保法下の再生医療等の提供に関する通知「特定認定再生医療等委員会におけるヒト多能性幹細胞を用いる再生医療等提供計画の造腫瘍性評価の審査のポイント」(医政研発0613第3号別添 平成28年6月13日)では、遺伝的不安定性試験法としてGバンド核型解析、FISH、アレイCGH、SNPアレイ、次世代シークエンサーなどによる解析が挙げられている。また、FISHや次世代シークエンサーによる情報については、遺伝子変化(変異のタイプとそのアリル頻度)に対する検出感度と適切なコントロールの入手可能性を課題として検討しつつ、造腫瘍性との関連性について科学的検証を進め、試験法として利用することの妥当性を評価すべきとされている。なお、概してこれらの試験は製品細胞の特性解析として有用であるが、現時点では出荷基準というよりも細胞の特性等に関する参考情報を得るという目的で実施されるものとされる。

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