主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
2016年12月以降、米国Food Drug Administration(FDA)において、Standard for Exchange of Nonclinical Data(SEND)の提出が義務化されて以降、日本においても、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施している新薬承認審査等へのSENDの活用を調査・研究する目的で、AMEDにおける「医薬品の安全性及び品質確保のための医薬品規制に係る国際調和の推進に関する研究」の分担研究班で検討が行われている。
PMDAは、初回治験届では、初めてヒトに投与される場合の安全性確保の観点から調査を行い、承認時では、承認可否のみならず毒性プロファイル、ヒトへの外挿性・安全性等の観点から審査を実施している。現状、FDAが実施している毒性の個別データを用いた独自の再解析は、PMDAにおいて通常は実施されないが、審査に関する情報公開範囲が他の規制当局と比較して広いこと踏まえ、毒性やヒトへの外挿性に関する解釈が相違する場合には、申請者へ照会し、その意見を理解した上で審査報告書が作成される。このような条件において、毒性領域の審査員は、膨大な最終報告書を迅速かつ網羅的に理解し、限られた審査期間で毒性の全容を明らかにするスキルが必要とされる。
本発表では、PMDAにおける現状の初回治験届時調査及び新薬承認審査における毒性試験成績の具体的なレビューポイントや現行の課題を示した上で、最終報告書中の個体毎の異常値(所見)を、SENDを用いて可視化することで、個々の審査員のスキルや経験に大きく依存することなく、初めてヒトで投与される場合により安全な治験の実施を目的とした調査、又は承認審査において毒性の全容を迅速理解することが可能となる具体的な事例も含め、SENDの初回治験届又は新薬承認審査への活用の可能性について報告する。