日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-244
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エジプシャンルーセットオオコウモリ(Rousettus aegyptiacus)における抗血液凝固系殺鼠剤の薬物動態学/薬力学的解析
*武田 一貴真砂 皓大中山 翔太川合 佑典池中 良徳石塚 真由美
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抄録

【背景】

小笠原諸島では人の往来の増加に伴い外来クマネズミ(Rattus rattus)の侵入が問題となっている。これらは固有動植物の捕食により生態系へ被害を与える。このため抗凝血系殺鼠剤による駆除事業が実施されてきたが、同時に非対象動物への曝露も懸念される。殺鼠剤等化学物質感受性には種差が存在し、その評価には体内動態や標的分子(ビタミンKエポキシド還元酵素:VKOR)の解析が有用である。本研究では小笠原諸島唯一の固有哺乳類であるオガサワラオオコウモリの感受性評価のために近縁種であるエジプシャンルーセットオオコウモリ(Rousettus aegyptiacus)を用いた薬物動態学/薬力学的(PK/PD)解析を実施した。

【方法】

SDラット、エジプシャンルーセットオオコウモリに抗凝血系殺鼠剤ワルファリン・ダイファシノンを経口投与しPK/PD解析を行った。

【結果と考察】

ワルファリン投与後、コウモリとSDラットの双方で血液凝固時間の有意な延長が認められたが、コウモリの方が早期に正常値へ復帰した。また、PK解析ではコウモリはワルファリンの高クリアランスを示し、その代謝産物の生成量もSDラットと比べ高い傾向を示した。以上の結果から、コウモリではSDラットと比較し高い代謝能による迅速な排泄でワルファリンに耐性を得ている事が示唆された。一方、ダイファシノンではコウモリの方が投与後早期での血液凝固時間の延長と低いクリアランスを示し、SDラットと比べ高感受性である可能性がある。これらの結果から、エジプシャンルーセットオオコウモリはワルファリンには比較的低感受性だがダイファシノンの感受性は高い事が示唆され、安全な殺鼠剤の使用には懸念種の感受性評価とそれに応じた殺鼠剤の選定が重要であると言える。今後はオガサワラオオコウモリとエジプシャンルーセットオオコウモリの遺伝子相同性解析を行いよりオガサワラオオコウモリでのより詳細な感受性評価を行う事が求められる。

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