日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-20S
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臭素系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールAはうつ様行動を引き起こす
*福澤 凌平中島 晶
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抄録

[背景・目的]

テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)は電子機器や家具など身の周りの製品に幅広く利用されている世界で最も主要な難燃剤である。TBBPAは環境暴露により体内に蓄積し中枢神経機能に影響を与えることが示唆されているが、その詳細は明らかではない。本研究ではTBBPAが情動行動に与える影響を検討した。

[方法]

8週齢の雄性ddYマウスにTBBPA 500 mg/kg bwを2週間経口投与し、不安およびうつ様行動に対するTBBPAの影響を行動試験により検討した。行動試験としてオープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、および強制水泳試験を行った。

[結果・考察]

オープンフィールド試験は実験動物の自発運動量や探索行動を測定し動物の不安様行動を評価する方法である。オープンフィールド試験ではTBBPAの投与によるセンターエリアへの侵入回数、滞在時間および探索行動量に差は見られなかった。次に行った高架式十字迷路試験は床から50cmの高さにある十字型で交差したオープンアームとクローズドアームからなり、各アームの侵入回数および滞在時間を測定する実験である。オープンアームには壁が無く絶壁であり解放状態が不安や恐怖を誘引するため、オープンアームへの侵入回数と滞在時間から不安様行動を評価した。高架式十字迷路試験ではTBBPAの投与によりオープンアームへの侵入回数および滞在時間の変化は見られなかった。強制水泳試験では水面上に頭部を保持するのに必要な体動のみを呈し浮遊している状態を無動反応と判定し、無動反応時間からマウスのうつ様行動を評価した。強制水泳試験の結果、TBBPA投与による無動反応時間の延長が見られた。

[後論]

臭素系難燃剤であるTBBPAは不安様行動には影響を与えないが、うつ様行動を引き起こすことが示唆された。

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