日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-3
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シンポジウム 21
非遺伝毒性発がんAOP
*久田 茂坪田 健次郎青木 豊彦池田 孝則長澤 達也佐々木 萌山田 久陽渡部 一人
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抄録

AOP(Adverse Outcome Pathway)は有害影響発現に至る経路と作用機序の概念を組み込んだもので、分子レベル開始事象とリスク評価に資する有害影響を関連付ける概念的枠組みである。このAOPを基盤として、メカニズムベースでヒトでのリスクを評価する手法となるIntegrated Approach to Testing and Assessment (IATA)を開発することがOECD AOPプログラムの主要な目的の一つとなっている。ヒト発がん性評価のIATA開発においては、非遺伝毒性発がんに関するAOPとそのヒトへの外挿性に関するデータの集積が不可欠であることから、日本製薬工業協会(製薬協)医薬品評価委員会 基礎研究部会がん原性評価見直しタスクフォースでは、非遺伝毒性化学物質(医薬品)により誘発される17の腫瘍種の発がん機序(MOA)とヒトでの発がんリスク評価について文献調査し、第43回日本毒性学会学術年会ワークショップ「ICH S1がん原性試験ガイドライン改定に係わる前向き調査におけるがん原性試験評価文書(CAD)の中間評価と薬理作用及び標的臓器から見た発がん」にて紹介した。OECD AOPプログラムには、すでに17腫瘍種(肝臓、乳腺、甲状腺、子宮、腎臓、肺、精巣、卵巣、前胃、膵臓腺房細胞、膀胱、下垂体、眼球、鼻腔、中皮の各腫瘍、並びに肉腫、乳児白血病)について37件のAOP作成が登録されている。我々は、これらと重複しない8腫瘍種(副腎髄質、下垂体、膵臓腺房細胞細胞、ラ氏島、甲状腺C細胞、腺胃粘膜、腎臓、精巣間細胞)に関して13件のAOPの作成を計画し、既存の文献情報等を基にStandard Project Submission Form (SPSF)を作成し、OECDに申請した。これらの13件のAOP中、12件の腫瘍はヒトへの外挿性が低いと考えられるが、ヒトでの発がんリスク予測には、げっ歯類での発がん性が予測される場合であっても、その発がん経路に関する種差の検討が必須となることから、ヒトへの外挿性を考慮したげっ歯類特異的な発がんに関するAOPを作成することは有用と考えている。これらのAOPに基づくIATA開発の展望についても紹介したい。

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