日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-16
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一般演題 口演
幼若ラット腎臓におけるウラン動態と化学形解析
*武田 志乃吉田 峻規沼子 千弥上原 章寛佐藤 修彰寺田 靖子小久保 年章石原 弘
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抄録

【はじめに】

 福島原発廃炉作業が本格化し、炉内にて発生した燃料デブリや汚染水、廃棄物等の処理における有事に備え、関連核種の生体影響に関する科学的知見の整備が求められている。中でもウランは腎毒性物質であり、幼齢期での腎毒性重症化が報告されているが、小児期影響のリスク評価の基礎となるデータは乏しい。本研究では、幼齢期におけるウラン代謝・体内動態特性を明らかにするため、幼齢ラットにおける尿中ウラン排泄ならびに腎臓のウラン残存や化学形態変化を調べ成熟個体と比較した。

【実験】

 Wistar系雄性ラット(3または10週齢)に酢酸ウラニルを0.5 mg/kgの割合で背部皮下に1回投与した。対照群には生理食塩水のみ投与した。ラットを個別代謝ケージに移し、投与後1~42日に採尿を行った。尿中ウラン濃度はICP-MSにより測定した。また経時観察群も設定し、一方の腎臓から凍結切片を作成し(10 µm厚)、高輝度光科学研究センター放射光施設SPring-8にてマイクロSR-XRFによる分布解析とマイクロXAFS測定による化学状態解析を行った。もう一方の腎臓から組織病理解析を行った。

【結果・考察】

 投与後1日目の幼齢ラットのウラン尿排泄は投与量の22.4%であり、成熟ラットの1日目の尿排泄量と比較すると6割程度と初期排泄が低かった。投与後2日目から4日目にかけては投与量の4%程度の排泄量で推移し、42日目でも投与量の0.05%の排泄が検出された。一方腎臓のウラン含量は、幼齢ラットでは投与後43日目においても1日目の76%残存し、9.5%まで低下した成熟ラットと比べ腎排泄が遅かった。幼齢個体は成熟個体に比べウランの体内残存が高く、このことが腎臓での遅いウラン排泄の一因であると考えられた。尿細管ウラン局在部には投与した酢酸ウラニルよりも還元型のウランが検出されており、腎臓組織の経時変化と合わせて報告する。

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