日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-125
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有機リン系難燃剤およびその代謝物による発達期ゼブラフィッシュに対する影響
森田 友里若山 裕己芳之内 結加岩田 久人川合 佑典*久保田 彰
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抄録

有機リン系難燃剤 (OPFRs) は、臭素系難燃剤の代替物として世界中で使用が増加している。OPFRsは揮発性が高く室内空気汚染物質として問題視され、化学物質過敏症との関連性も疑われている。OPFRsは一般に環境残留性および哺乳類に対する毒性は低いことが古くから知られていたが、最近の研究では魚類や鳥類などの野生生物からOPFRsを検出した報告例や、魚類胚に対する毒性を明らかにした報告例も散見される。さらに、in vitroレポーターアッセイ系において、一部のOPFRsは親化合物よりも代謝産物でエストロゲン活性が高いことも報告されている。そこで本研究では、ゼブラフィッシュ胚を用いて、多様なOPFRsおよびその代謝物の毒性影響を評価することを試みた。受精後72時間のゼブラフィッシュ胚にtriphenyl phosphate (TPhP)、tricresyl phosphate (TCP)、tris(1,3-dichloro-2-propyl) phosphate (TDCPP)、tris(2-chloroethyl) phosphate (TCEP) をそれぞれ水性曝露し、受精後96時間における発生毒性を評価した。さらに、TPhPの主要代謝物である4-hydroxylphenyl diphenyl phosphate (HO-p-TPHP)、diphenyl phosphate (DPHP)、4-hydroxylphenyl phenyl phosphate (HO-DPHP) を同様に水性曝露し、発生毒性を評価した。OPFRsの親化合物を用いた曝露試験の結果、TPhP、TCP、TDCPPは10 µMで全身血流の低下や心臓周囲浮腫を誘発した。これに対し、TCEPでは30 µMにおいても毒性は認められなかった。さらに、TPhPのみ体躯の矮小が認められた。TPhPの主要代謝物を用いた曝露試験では、HO-p-TPHPのみ10 µMで心血管毒性を示した。興味深いことに、TPhPでみられた体躯の矮小は、HO-p-TPHPでは認められなかった。以上の結果より、多様なOPFRsがゼブラフィッシュ胚に対して心血管毒性を引き起こすことや、OPFRsの代謝物にも同様の発生毒性を引き起こす物質が存在することが示唆された。

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© 2017 日本毒性学会
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