日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-12
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優秀研究発表 ポスター
データサイエンスに基づいた染色体異常誘発性の高精度予測と発がん性予測への展開
*藤田 侑里香本田 大士松村 奨士川本 泰輔森田 健松田 知成伊藤 勇一山根 雅之森田 修
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抄録

 染色体異常誘発性は発がんの原因となりうるため、その評価は公衆衛生の観点から重要と考えられ、従来から高感度なin vitro染色体異常試験(CAT)が使用されてきた。しかしCATはin vitro特異的な陽性(偽陽性)結果が多いため、CATのin silico予測精度の改善、さらには遺伝毒性試験に基づく高精度な発がん性予測を行うには、CATの偽陽性及び陽性に関連する化学構造および作用機序の十分な把握が課題として考えられた。そこでまず、細胞毒性のCAT偽陽性への寄与を調査するために、細胞毒性に起因する偽陽性物質を抽出する数学的手法を構築し、化審法・安衛法のデータベースを対象とした遡及評価へ適用した結果、129陽性物質のうち約30%が偽陽性である可能性が見出された。次に、細胞周期を考慮した細胞毒性指標を用いて一部物質の染色体異常誘発性を再評価した後に、データベースを陰性、偽陽性及び陽性に再分類し、一般線形回帰モデルを用いて染色体異常誘発性に関連する化学構造の同定と予測モデルの構築を行った。その結果、陽性結果にはDNA付加体形成に係る化学構造等が、偽陽性結果には低pH誘発を示唆する化学構造等が同定された。本検討で構築された陽性予測モデルは予測率88%と既存ツールの予測率76%と比較して良好であり、偽陽性予測モデルは予測率85%と既存ツールの予測率51%と比較して大きく改善した。さらに、CATを含む各種遺伝毒性試験結果と化学物質の構造・物性情報を用いた機械学習法による発がん性予測系を構築した結果、発がん予測精度は80%以上となり、既存の遺伝毒性試験のバッテリー評価(51%)よりも顕著に高値であった。本検討によりCATの偽陽性と陽性に関わる化学構造と作用機序を把握すると共に、in vitro及びin vivoの染色体異常誘発性と遺伝毒性発がん性の高精度な予測系を構築できた。

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© 2017 日本毒性学会
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