日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-264
会議情報

一般演題 ポスター
代謝酵素活性の日内変動と栄養状態による変化がアセトアミノフェン誘発性肝障害に及ぼす影響
*土屋 祐弥井川 貴礼楢本 恭子加藤 真之平田 暁大酒井 洋樹市原 賢二栁井 德磨
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

アセトアミノフェン(APAP)は過剰量の服用により肝障害を生じ、低栄養状態ではより肝障害を起こしやすい。体内に吸収されたAPAPの多くはグルクロン酸抱合や硫酸抱合にて排泄され、一部はCYP2E1で代謝されて肝障害の原因である活性代謝物となるが、グルタチオン抱合にて排泄される。薬物代謝に関わるシトクロムP450活性の日内変動は薬物の効果や毒性発現に関係し、CYP2E1活性は摂餌の有無で変化することがラットで報告されている。そこで、APAPの代謝や排泄に関わる代謝酵素活性の日内変動や栄養状態による変化が、肝障害に及ぼす影響を検討した。Wistar系ラットを用いて、飽食下の朝方と夕方、一晩絶食下の朝方及び給餌量を70%に制限した低栄養下の夕方における代謝酵素の遺伝子発現量とグルタチオン量を測定するとともに、同じ条件下で800 mg/kg(ヒト最大服用量の2倍相当)のAPAPを経口投与し、肝障害の発現を比較した。
その結果、代謝酵素の遺伝子発現量及びグルタチオン量は、飽食下の朝方と夕方では大差なかったが、絶食下及び低栄養下では飽食下と比較してCyp2e1の発現量が約3倍に上昇し、グルタチオン量は約40%に低下した。肝障害は、飽食下の夕方投与で最も強くみられ、絶食下、低栄養下の順で減弱し、飽食下の朝方投与では認められなかった。
以上、APAPの肝障害に関わる代謝酵素の活性は、朝・夕の日内変動よりも栄養状態に影響されることが確認された。しかし、代謝酵素活性の変化から予測される肝障害の程度と、APAP投与でみられた肝障害の程度は必ずしも一致しなかった。低栄養下では抗酸化酵素の活性が上昇することや、アミノ酸の1つであるシステインがAPAP中毒の解毒剤として使用されることから、APAPによる肝障害の発現は投与前の栄養状態だけでは予測できず、投与後の摂餌状況など複数の要因が関与しているものと考えられた。

著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top