日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-45
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Wistar Hannoverラットにおける4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)の長期投与による影響
*立花 滋博古谷 真美加藤 博康根倉 司高岡 裕田面 喜之関 剛幸堀内 伸二稲田 浩子三枝 克彦渡辺 卓穂桑形 麻樹子
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抄録

4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール;TBC)はエストロゲン受容体結合性試験ではビスフェノールA(1.4 x 10-5M)とほぼ同濃度(1.8 x 10-5M)にてエストラジオールと拮抗してエストロゲン受容体に結合し、子宮増殖性試験では60 mg/kg/dayの用量でエストロゲン作用を有する。これまでに28日間反復経口投与毒性試験、2カ月間混餌投与雄性生殖毒性試験が実施されており、肝臓、消化管および雄の生殖器官への影響が155~250 mg/kgにて報告されている。一方、簡易生殖毒性試験では、80 mg/kg以上の用量で消化管壁の肥厚が観察されたが、繁殖能への影響は500 mg/kgでも認められていない。今回、TBCをさらに長期間暴露した場合の毒性変化を調べるために、6カ月間反復経口投与毒性試験を行った。
 Wistar Hannover (Crl:WI(Han))ラット(雌雄各9匹/群)に0(5%アラビアゴム水溶液)、100および500 mg/kgのTBCを6カ月間強制経口投与し、医薬品毒性試験法ガイドラインに沿った検査項目に加えて精子検査を実施した。その結果、500 mg/kg投与群では、投与開始後に軟便および摂餌量の一時的な減少がみられた。血液および血液生化学的検査では、血小板数の増加、総コレステロール濃度の増加、ALTおよびAST活性の上昇が認められた。病理学的検査では、肝臓重量の増加、肝臓の中間帯での単細胞壊死が観察されたほか、小腸および大腸粘膜上皮細胞の過形成、盲腸粘膜層に単核細胞浸潤が観察された。また、100 mg/kg投与群でも軟便および肝臓の変化が観察された。その他、体重、眼科学的検査、尿検査にはTBCによる影響はみられず、精子検査および生殖器官の病理組織学的検査にも異常は認められなかった。
 以上の結果から、既報と同様の毒性変化が主に腸管および肝臓に認められたが生殖器官に異常はみられず、精子機能にも影響は認められなかった。

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© 2012 日本毒性学会
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