プリン・ピリミジン代謝
Online ISSN : 2187-0101
Print ISSN : 0916-2836
ISSN-L : 0916-2836
痛風,腎障害を合併した下垂体機能低下症の1女性例
三枝 芳樹新藤 英夫三輪 勣寺田 仁久山下 晴夫神宮寺 禎巳加賀美 年秀
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 15 巻 1 号 p. 15-22

詳細
抄録

下垂体機能低下症に痛風を合併した1女性例を経験した.症例は31歳女性で11歳時に頭蓋咽頭腫にて腫瘍摘出術および放射線照射を受けた.29歳時, 全身倦怠感, 浮腫出現し当院受診. 下垂体機能低下症,尿崩症および性腺機能低下症と診断された.血清尿酸値9.5mg/dlであった.以後,各種ホルモン補充療法とともにアロプリノールの投与も受けた.アロプリノールは本人の独断で2ヵ月間で中止された.31歳時,高熱と左足背部の激痛・発赤・腫脹を生じ入院.血清尿酸値11.7mg/dl,クレアチニン値1.7mg/dl,CUA/Ccr6.7%であり,腎CT・エコー,静脈性腎盂造影には異常所見を認めなかった.発作はコルヒチンにて寛解したため,痛風と診断された.また,検査所見,経過などにより,高尿酸血症の主たる要因は尿中尿酸排泄の低下にあると考えられた.下垂体機能低下症と痛風の合併の報告は調べ得た範囲ではない.ホルモンと尿酸代謝に関して,エストロゲンが腎からの尿酸排泄を促進する作用を有するとの報告がある一方で,痛風患者においては男女ともに,FSH,LH,エストラジオールが減少しているとの報告もあり,両者の間に密接な関係があることが示唆される.以上より,本症例は女性ホルモンの欠如が高尿酸血症,痛風発作の一因となったものと考えられた.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
前の記事 次の記事
feedback
Top