日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
2011年年会講演予稿集
セッションID: 2P097
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化学合成法によるチタニアナノシートの析出と生体適合性評価
*小正 聡田口 洋一郎西田 尚敬楠本 哲次武田 昭二田中 昌博川添 堯彬関野 徹
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抄録

近年,共同研究者により,室温での濃アルカリ溶液中反応においてチタン(Ti)金属表面に酸化チタンナノシート(TNS)が直接形成することが見出された.このような低次元ナノ構造体は,生体組織とナノレベルで相互作用することから生体適合性材料への応用展開が期待される. そこで本研究では,チタン金属表面に形成したナノ構造の物理化学的性質の解明と生体適合性材料への応用を目的とし,基礎的研究の一環として,チタン金属表面にナノシートを形成し,骨髄細胞の分化発現について比較・検討を行った. 実験材料として,TNSを析出させた市販の純チタン金属板を使用し,対照群として#2000まで研磨した純チタンを使用した.生後7週齢のSD系雄性ラットの両側大腿骨から骨髄間葉細胞を採取し3代目を実験に供した.細胞を1穴あたり4×104個ずつ各試料上に播種し,培地に10 mM β-グリセロン酸ナトリウムと82 μg/ml アスコルビン酸,10 Mデキサメタゾン含有の分化誘導培地を用い,培養後14,21日後のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性およびCa量を測定した.各測定値は Studentのt検定を用い,統計解析を行い,有意水準は5%以下とした. 24時間反応させたチタン金属表面には全試料において,ナノシート構造が走査型電子顕微鏡にて確認された.培養開始後14日,21日各々においてALP活性,Ca量ともに,実験群では対照群と比較して有意に高かった.一方,分化した骨髄細胞のDNA量については実験群と対照群で有意差は認められなかった. 以上の結果から,化学合成法によって析出したチタニアナノシートが骨髄細胞の初期接着,しいては硬組織への分化誘導の向上に有用であることが示唆された.

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©  日本セラミックス協会 2011
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