日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S15-4
会議情報
複数の繁殖形質の共進化の中で考える性的対立_-_乱交性のハサミムシを題材に_-_
*上村 佳孝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ある形質に対する最適値が雌雄で異なる場合,性的対立は生じる.盛んに交尾を試みる雄に対して,雌が拒否行動を示せば,交尾回数に関する性的対立の存在が容易に予測される.しかし,今回の発表では,雌雄ともに著しく高い頻度で交尾をおこない(乱交性),交尾に関して目だった葛藤がないように見えるコバネハサミムシ(以下,コバネ)を題材に,本当に葛藤がないのか?考えてみたい.
激しい精子競争が生じているコバネでは,雄の体長に匹敵するほど長い交尾器を用いて,細管上の受精嚢(雌の精子貯蔵器官)から,すでに存在している精子の掻き出しをおこなう.しかし,雌の受精嚢はさらに長く,一部の精子しか掻き出すことはできず,すでに他の雄の精子を持つ雌と1回交尾した雄が残す子供の割合は約2割である.
体サイズの大きな雄は雌を独占し,より多数回繰り返し交尾し,高い繁殖成功を得る.雄の体サイズは有意な遺伝的基盤を持ち,大きく繁殖成功の高い父親の息子はやはり繁殖成功が高くなると期待される.このような条件のもとでは,雌は自らを独占する能力の高い雄の精子を集めることで,優れた息子を得るという遺伝的利益を得ることができ,一回の交尾あたりの父性の置換率を2割程度に抑えることで,このような利益が最大化されることを数値シミュレーションは示した.すなわち,低い精子置換率をもたらす雌の長い受精嚢は,何度も繰り返し交尾可能な優れた雄の精子を効率良く集めるための適応と考えられる.しかし,雄が同じ雌と繰り返し交尾をおこなうという現象は,一回の交尾あたりの精子置換率が低い場合に進化し易いものと予想され,両形質は共進化する可能性がある.
発表では,雌雄双方の適応を考慮した共進化モデルと,一方の性の視点のみを考慮した最適化モデルの解析結果を比較し,交尾回数・精子置換率という複数繁殖形質の共進化の観点から「隠された対立」の分析を試みる.

著者関連情報
© 2005 日本生態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top