日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: P2-171
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夏期の屋上緑化土壌の保水・温度低減における竹炭の効果
牧原 央尚辻井 正平*中根 周歩中坪 孝之実岡 寛文
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抄録

都市生態系は、夏期には高温と乾燥または集中豪雨の際の地下洪水の発生をもたらす。そこで、屋上緑化が注目され、推奨されているが、従来のシステムでは雨水の再循環よりも灌水・貯水システムの整備に依存している。本研究は、軽量(少量)土壌という屋上緑化の制約の中で、竹炭を保水材として利用することによる、保水力の飛躍的向上と温度低減の効果を検討した。広島大学の屋上に、80cm×80cm×30cm(高さ)のプラスチック再生資材のボックス32個を用い、マサ土20kgに竹炭0, 5, 10, 20kgと発泡スチロールを土壌容積の0, 10, 20, 30%をそれぞれ配分した16通りの処理区(2個づつ)を2004年3月に設置した。各処理区では土壌含水率(TDRセンサー)と表層と深さ5cmの温度(T&D,TR81)を測定し、また長短波計、熱流計、2高度の温湿度計で屋上土壌とコンクリートにおける熱収支を推定した。測定期間は6_から_10月で測定間隔は30分であった。各処理区の1個は寒地生芝(3月播種)を、もう一つには暖地性芝を播種した(5月)。灌水は播種後2ヶ月間で、その後は雨水のみとした。6、7、8月の連続晴天日(7_から_10日間)時の土壌含水率は、寒地性芝ボックスでは竹炭が多いほど含水率の低減が抑制され、高い含水率(竹炭20kg区で40%以上)が維持されていた。また、地表温度はコンクリートが69℃の最高値の時、竹炭0kg区で58℃、10, 20kg区で37℃で、深さ5cmでは、どの区もさらに約5_から_10℃低減した。発泡スチロールの存在は竹炭との相乗効果をもたらした。一方、コンクリート上で測定された熱収支(8月)は、日中は有効日射量の大半が地中熱流と顕熱となり、夜間はコンクリートから多量の熱が放出するのが確認された。これに対して、暖地性芝ボックスでは、芝の生育によって日中では潜熱の増大と顕熱・地中熱流の減少をもたらし、夜間の熱放出も極めて少ないなどヒートアイランドの抑制効果が明瞭に示された。

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© 2005 日本生態学会
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