「付着根型つる植物」は、林縁にのみ生育する「巻きつる型つる植物」に比べ、林床という暗い光環境下で、発芽・成長し、他の樹木の根元から幹に付着して、登攀し、自ら光環境を変えていく独特の生活型をもっている。つまり、「付着根型つる植物」の成長は、支持樹木への到達前と到達後とでは光屈性が異なる可能性がある。今回は、キヅタの匍匐シュートの伸長様式から、光傾度に対する光屈性の特徴について報告する。
岐阜市でキヅタ1個体を採取し、節毎に切り分け、挿し木を行った。このキヅタ挿し木苗を用い、実験室内で人工光源(トルーライト)によって光傾度に対する光屈性を調べた。
人工光源下に移動後、シュートが伸長した個体を対象に伸長様式の傾向をみたところ、匍匐シュートの伸長方向は光傾度に対して、シュートの水平方向への伸長方向の両側面とシュートの鉛直上向きの面・背面、それぞれについてほぼ同一の光環境を保ちながら、暗い方へ向かって成長した。したがって、付着根型つる植物のキヅタ匍匐シュートの成長様式は、水平方向だけではなく、垂直方向においても負の光屈性を持って匍匐・伸長する性質があることがわかった。