日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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定常的窒素不足状態に曝されたシロイヌナズナの生育に対する高CO2環境の影響
*高谷 信之森 万里江木羽 隆敏前田 真一小俣 達男
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p. 0015

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抄録

CO2と窒素は、共に植物の生長に多量に必要とされる栄養素であり、それぞれの同化系は密接に関連している。窒素栄養が充足した実験条件下ではCO2濃度の上昇によって植物の生育が向上することが観察されているが、実験室内で定常的に窒素不足状態を維持することが困難であるために窒素栄養が不足した条件下での植物の生育に対する高CO2環境の影響は不明である。本研究では、植物の主要な窒素源である硝酸イオンの輸送活性に欠陥を持つシロイヌナズナの変異株を用いて実験室内で定常的窒素不足状態を再現し、その生育に対するCO2濃度の影響を調べた。アンモニアを窒素源として与えた窒素充足条件では、野生株と変異株の間に有意な生長の違いは見られず、どちらの株も低CO2条件(280 ppm)に比べ高CO2条件(780 ppm)でバイオマスにして約2倍の増加が見られた。一方、15 mMの硝酸イオンを唯一の窒素源として与えた場合、野生株にとっては窒素充足条件でありアンモニアの条件と同様にバイオマスの増加が見られたが、変異株にはそのような増加は見られず高CO2条件において変異株の根は野生株と同様にバイオマスを増加したのに対して、シュートのバイオマスは全く変化しなかった。これは、定常的窒素不足状態の植物が高CO2環境で高められた窒素栄養の要求性を補うための特異的な応答であると考えられる。

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© 2011 日本植物生理学会
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