日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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炭素代謝,窒素代謝および還元力輸送に関わるプラスチド局在2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体
吉川 那々子長崎 順子*谷口 光隆富田 佑輔川崎 通夫三宅 博杉山 達夫
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p. 718

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抄録

プラスチド内包膜に存在する2-オキソグルタル酸(2-OG)/リンゴ酸輸送体(OMT)とジカルボン酸輸送体(DCT)は協調して機能していると考えられている.すなわち,TCA回路や光呼吸経路で生じた2-OGをプラスチド内のGS/GOGAT回路に受け渡すとともに,生じたGluのサイトソルへの排出を行っており,OMT/DCT輸送系は炭素代謝と窒素代謝を仲介する重要な役割をもつとされてきた.しかし,シロイヌナズナOMT遺伝子破壊株より単離した葉緑体を用いたin vitro解析の結果では,DCT単独でも十分な2-OG/Glu交換輸送が行われており,OMT/DCT共輸送系の必要性に疑問が生じていた.OMT遺伝子破壊株では野生株に比べて若干の生育遅延が見られている.そこで,葉中の代謝産物含量を測定したところ,2-OGおよびクエン酸含量が野生株に比べて高かった.アミノ酸においては,Glu,Asp,Ala,Serなどが低下している一方,Glnが増大していた.したがって,遺伝子破壊株では葉緑体への2-OG取り込みが低下しており,GS/GOGAT回路が十分に機能せず,以降のアミノ酸合成が抑制されているため生育遅延がおきていることが示唆され,生体中でのOMTの重要性が明らかとなった.また,遺伝子破壊株を強光に曝すと,野生株に比べて有意にΦIIおよびFv/Fmの低下が見られた.この光阻害がOMTを介した還元力輸送あるいは光呼吸とどのように関連しているかについても報告したい.

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© 2006 日本植物生理学会
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