日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光化学系II D1蛋白質のグルタミン酸189をグルタミンへ置換した酸素発生系の性質
*水澤 直樹木村 行宏石井 麻子中澤 重顕小野 高明
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p. 014

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抄録

D1蛋白質の189番目のグルタミン酸(Glu189)の側鎖カルボキシル基は酸素発生触媒中心であるMnクラスターの配位子候補として提唱されている。本研究では、Glu189カルボキシル基の役割を明らかにするため、Glu189をカルボキシル基側鎖を持たないGlnに置換したSynechocystis sp. PCC 6803変異株(Glu189Gln)を作製し、変異が酸素発生機能に与える影響を検討した。Glu189Glnは光独立栄養的に生育し、単離した光化学系IIコア標品は野生株に対し約70%の酸素発生活性を示した。S2状態のMnクラスターは正常なEPRマルチライン信号を示したが、熱発光Q-バンド (S2QA-)のピーク温度が野生株に比べ高温にシフトしており、Mnクラスターの酸化還元電位が低下していることが示された。また、変異株ではフーリエ変換赤外分光(FTIR) S2/S1差スペクトルの中波数領域(1800-1200 cm-1)に現れる、金属に2座配位したカルボキシル基のバンドとカルボニル基のバンドと、低波数領域(650-350 cm-1)に現れるMnクラスターの骨格構造に由来するバンドが顕著に変化した。以上の結果は、Glu189がMnイオンの2座配位子であることを示している。Glu189Glnではカルボキシル基に代わりカルボニル基がMnイオンの配位子として機能するため、Mnクラスターはほぼ正常な機能を保持しているものと考えられた。

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© 2006 日本植物生理学会
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