2017 年 9 巻 1 号 p. 42-49
本研究は,3つの実行機能課題施行中の前頭葉課題の活動をNIRSによって測定し強迫症患者と健常者の比較検討を行い,強迫症患者における精神症状と前頭葉活動の関係を調べた。対象は,DSM-5によって診断した14名の強迫症患者と,年齢と性別をマッチングした16名の健常者である。ロンドン塔課題及び言語流暢性課題において,課題施行中の脳血流変化量は健常者群に比較して,強迫症患者群において有意に低い変化量であった。また言語流暢性課題においては,左背外側前頭前皮質の脳血流変化量と強迫症状の重症度に負の相関が認められた。同時に構造方程式による解析では,うつ症状や不安症状との関連が認められた。これらから,強迫症の併存症状を含めた病態は,前頭前皮質,特に背外側前頭前皮質の脳血流変化量の異常と関連していることが示唆された。