ハスモンヨトウ(Spodoptera litura (F.))の処女雌が放出する物質をロ紙吸着法で採取し,低沸点エステルを構成するアルコールアセテートに誘導して検索したところ炭素数8から18にいたる飽和直鎖アルコール10種のほか,(Z, E)-9, 11-TDDA (A), (Z, E)-9, 12-TDDA (B), (Z)-9-tetradecenyl acetate (TDA) (C), (E)-11-TDA (D),および未同定のTDDA 1種を検出した。これらのうち処女雌がアセテートとして放出しているのはA, B, CおよびDの4化合物であった。これら4化合物の生物活性を野外で検討したところ,ハスモンヨトウ雄成虫に対する誘引活性は,AB混合物(リトルア)が最も高かった。化合物CおよびDは化合物AおよびBのいずれにも置換しえず,リトルアに対する共力効果も認められなかった。また,化合物Cは添加量が多くなるとリトルアの誘引活性を明らかに阻害した。したがって,化合物CおよびDはハスモンヨトウの誘引性性フェロモン成分ではない。