日本応用動物昆虫学会誌
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エチルチオメトンのガス効果について
高瀬 巌津田 秀子
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1972 年 16 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

エチルチオメトンが一たんガス化して植物体に吸着され,浸透移行するということを,モデル実験および圃場試験を行ないガスクロマト法の分析手段より,化学的側面から検討を行なった。その結果
1) エチルチオメトンはガス化して植物体に吸着され,その検出量は根などから浸透移行してきたものより少なくない。
2) 植物体内でのエチルチオメトンとその酸化代謝物の分布割合は根より吸収,浸透移行した場合,エチルチオメトンはほとんど検出されず,酸化代謝物が大部分であるのに比し,ガス吸着ではエチルチオメトン(P=S, S)そのものが非常に多く,したがってその分布割合が非常に異なる。
3) ガス吸着されたP=S, Sは植物体内で,時間の経過にともない,酸化されて酸化代謝物が多くなり,土壤中あるいは根,茎葉より浸透移行したときの分布割合とほぼ同様な比率となってくる。
4) エチルチオメトンを圃場で地表処理した場合,ガス態となって植物に吸着され,地中処理よりも検出量が多く,コナガに対する殺虫効力も高かった。
5) 蒸気化率を測定した結果,エチルチオメトンは蒸気化速度が早く,酸化代謝物であるエチルチオメトン・スルホキサイドなどは蒸気化率が低く,この物理化学的性質はガス効果発現と明らかな相関関係があった。しかし酸化体はいずれも水溶性が著しく高まり,植物の根,葉よりの浸透移行性が強まることを示している。

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