日本応用動物昆虫学会誌
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生物試験による殺虫剤適用上の基礎的研究
X.食餌水稲の生育程度のちがいがニカメイチュウ幼虫のパラチオン感受性に及ぼす影響について
橋爪 文次山科 裕郎
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1957 年 1 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

筆者らはさきに化期の異なるニカメイチュウ幼虫は孵化当時すでにパラチオンに対する感受性に差が認められ,その差は幼虫の生育にともなって増大することを報告した。
この実験では食餌水稲の生育程度のちがいがニカメイチュウ幼虫のパラチオン感受性にどのような影響を及ぼすかを検討した。
分けつ期の水稲でおおむね3令まで飼育した第1化期および第2化期幼虫と幼穗形成期以後の水稲で同令期まで飼育した第2化期幼虫に,それぞれパラチオン混合餌料を与え,三つの異なった幼虫個体群についてパラチオン濃度と致死時間との関係を調べた。
その結果を要約すると,分けつ期の水稲を与えておおむね3令まで育てた第1化期および第2化期の幼虫のパチオランに対する感受性の差は,孵化当時の幼虫に見られるそれとほとんど変りなく,第1化期幼虫と第2化期幼虫の中央致死濃度の比は1:1.42を示した。
しかしながら幼穗形成期以後の水稲でおおむね同令期まで育てた第2化期幼虫のパラチオンに対する感受性は著しく低下し,分けつ期の水稲で飼育した第1化期幼虫との中央致死濃度の比は3.62:1,同じ分けつ期の水稲で飼育した第2化期幼虫との比は2.55:1を示した。
すなわち食餌水稲の生育程度のちがいはニカメイチュウ幼虫のパラチオン感受性に著しい影響を与えるひとつの要因であると考える。

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