2014 年 71 巻 7 号 p. 325-333
ピロメリット酸の1,4-ジアルキルエステルと4,4-ビフェノールから合成されたポリエステルは液晶状態を経て独特の層状構造を形成する.これを気体分離材料として応用するために,気体拡散性を向上させる方法を検討した.炭素数18のアルキル側鎖を主成分とし,これより短い側鎖を少量含むコポリエステルを合成し,いずれも高分子鎖が同程度の間隔で配列した層状構造を形成することを確認した.炭素数14のアルキル側鎖成分を20%含むコポリエステルは,炭素数18のアルキル側鎖成分のみから成るポリエステルと比べ,メタンの拡散係数が増大した.このコポリエステルを強磁場下で調製すれば層状構造が磁場印加方向に一軸円筒対称に配向することを確認した.配向試料のメタン拡散係数は,無磁場下で調製し層状構造をランダム配向させた試料の値より大きくなった.共重合化と磁場配向の併用により気体の拡散性は相乗的に向上することが見いだされた.