2011 年 68 巻 9 号 p. 608-615
非溶媒中におけるポリメタクリル酸メチル(PMMA)薄膜の密度分布を中性子反射率測定に基づき評価した.非溶媒として水,ヘキサン,メタノールを用い,各種溶媒中における PMMA 薄膜の密度分布を評価した.その結果,水界面においては,PMMA 分子鎖がセグメントレベルで溶解することを明らかにした.また,水よりも PMMA と親和性の低いヘキサン界面においては,水を用いた際のようなセグメント溶解は起こらないこと,メタノール中では膜全体が膨潤することを明らかにした.非溶媒にアルコールを用いた場合,膜中における分子鎖は擬平衡状態にあるといえる.その状態における膜中へのアルコール収着の程度はアルコールのアルキル鎖長に依存した.また,膜内部におけるアルコールの体積分率から PMMA とアルコール間の相互作用(χ)パラメータを算出した.さらに,アルコールと接した PMMA 界面の広がりおよび基板界面における濃縮層の厚さはそれぞれ χ パラメータおよびアルコールのモル体積に依存することを見いだした.