2021 年 74 巻 5 号 p. 315-320
家畜におけるEscherichia albertii の保菌状況を明らかにするため,2017年7~12月の期間に,沖縄県内のと畜場に搬入された豚,牛及び山羊の腸内容物450検体を検査した.また,分離株の分子疫学的解析等を行った.沖縄本島各地からと畜場へ搬入された豚250検体(41農場)中17検体(8農場)から本菌が分離された.分離率は6.8%,農場陽性率は19.5%であった.牛及び山羊はすべてスクリーニング陰性であった.豚由来株はいずれも同様の生化学的性状を示し,すべての分離株から病原関連遺伝子eae 及びcdt が検出された.パルスフィールドゲル電気泳動による遺伝子パターンの解析から,豚が保有する菌株は遺伝的多様性があることが明らかとなり,農場内で豚間あるいは環境を介して本菌が伝播し,遺伝子変異を示しつつ比較的長期間維持されていることが示唆された.