2017 年 70 巻 6 号 p. 381-384
熊本県では野生獣肉の安全性を確保するため,独自のモニタリング検査を実施している.2016年2月に猪8頭及び鹿2頭の検査を実施し,そのうち1頭の野生の猪の肝臓から本邦で初めて,ペニシリン,オキサシリン,アンピシリン,セファロチン,ストレプトマイシン,ゲンタマイシン及びST合剤に耐性のSalmonella enterica subspecies enterica serovar Choleraesuis biotype Kunzendorf を分離した.本分離株はTEM-1型のペニシリナーゼ遺伝子を保有していた.食用である野生の猪の肝臓から本菌が検出されたことから,人が多剤耐性サルモネラに曝露される可能性が示唆された.また,野生の猪が本菌を保菌し,養豚場への汚染源となり得ることがわかった.