2012 年 65 巻 6 号 p. 457-461
5歳9カ月,雌のカリフォルニアアシカ(Zalophus califomianus)が5カ月前より摂餌󠄀不良となり,右眼窩前方の腫脹と右上顎犬歯部の歯肉粘膜からの排膿を認めた.抗生物質の投与により一時的に腫脹は消失し,摂餌󠄀も再開したが,その後も再発した.ハズバンダリートレーニング下でのX線検査で右上顎犬歯根尖周囲に骨吸収像が認められたため,イソフルランによるチャンバー導入を行い,気管内挿管後に麻酔を維持し,口腔内検査及び治療を行った.口腔内は,咬耗による露髄が多数の歯でみられ,右上顎犬歯の根尖が位置する部位の頬側歯肉粘膜に瘻孔が認められた.右上顎犬歯と露髄したすべての歯を抜歯し,掻爬したところ,右上顎犬歯の抜歯窩と瘻孔に交通があり,この歯の根尖周囲病巣による内歯瘻と診断した.大型展示動物の咬耗による露髄は多く,日常的な口腔内及びX 線検査が必要である.