日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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牛の非白血性白血病に関する病理学的研究
大島 寛一小材 幸雄岡田 幸助沼宮内 茂
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1980 年 42 巻 3 号 p. 297-309

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抄録

1968年4月から1978年3月の間に得た成牛型牛白血病剖検例94例中11例(11.7%)が, ヨーロッパ共同体の血液学的診断基準により非白血性白血病と診断された. このうち3例は血液学的に末梢血中に異形細胞が143-450/cmm(1.5-3.6%)とほとんど認められず, 非白血病健康牛と区別し難いものであり, 他の8例はいわゆるリンパ球増多を示さないが, 異形細胞が891-2,912/cmm(9.5-28.0%)とかなり高率に認められた. 病理学的検索の結果, これらの腫瘍組織, あるいは腫瘍細胞は微細構造を含めて白血性白血病牛のそれと本質的に異なるものではなかった. 検索例全例を通じて脾臓における腫瘍細胞の増殖がほとんど認められなかったことは, 非白血性白血病牛の共通所見として取り上げられた. 末梢血中に異形細胞をほとんど認めない3例のうち, 1例は比較的病の初期を思わせるもので病巣の分布に乏しかったが, 他の2例ではかなり強い病巣が認められた. これらはいずれも他の例と異なり, 拡張したリンパ節洞における腫瘍細胞の浸潤増殖がび慢性かつ疎性であるため, 増殖した腫瘍細胞がまだ末梢血中に流入しないでいるように思われた. 以上の結果を総合し, 本病の生前診断に血液学的診断規準を応用する場合, 塗抹標本による詳細な観察が必要であることが論ぜられた.

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