日本薬理学雑誌
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総説
副腎アルドステロン合成酵素(CYP11B2)を標的とした新規創薬
菅原 明
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2020 年 155 巻 5 号 p. 319-322

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抄録

本邦における高血圧患者数は約4,000万人と概算されているが,未治療の患者を含めると約3,000万人で血圧コントロールが不十分であると考えられている.さらに,3種類以上の降圧薬を内服しても降圧目標に達しない治療抵抗性高血圧は,全高血圧患者の約2割にも上ると推定されている.従って,既に多くの降圧薬が上市されている現在でも,新規降圧薬の開発は必要であると考えられる.レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は血圧の主要調節因子であるが,現時点ではアルドステロン合成酵素(CYP11B2)発現・アルドステロン分泌を抑制する薬剤は存在しない.そこで今回我々は,アンジオテンシンⅡ刺激下でのCYP11B2発現抑制を指標として,化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング(HTS)を行った.ヒト副腎H295R細胞にCYP11B2プロモーター(-1521~+2)/ルシフェラーゼcDNAが恒常的に発現した安定発現株CYP11B2-H295Rを作成し,同細胞株のバリデーションを確認(Z’値>0.5)した後に,東大創薬機構のCore Library(9,600化合物),Validated Compound Library(1,979化合物),ならびに東北大学化合物ライブラリー(5,562化合物)を用いてHTSを行った.得られた化合物が細胞毒性を有さないことをWST-1アッセイで確認後,各々のライブラリーからヒット化合物を得た.今回我々は,これらヒット化合物の中からValidated Compound Libraryで得られた1化合物(ボルテゾミブ)に着目し,同化合物のin vivoでの降圧作用をつくば高血圧マウスにて確認した後,特許出願・論文化を行った.本稿では安定発現株作成からHTSまでの具体的な実験方法に関して概説する.

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