日本薬理学雑誌
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実験技術
Webアプリケーションを用いた薬物動態シミュレーション実習
原 一恵鈴木 宏昌草苅 伸也松岡 正明
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2020 年 155 巻 1 号 p. 51-55

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抄録

薬理学におけるコンピューターを用いたシミュレーション演習は,動物や生身の人体を用いずに行える学生実習方法であるというだけでなく,実際の臨床においても書物で得た知識を活用するための効率的な手段の一つである.東京医科大学薬理学分野では,薬物の個別治療に欠かせない薬物動態学の概念を視覚的に理解させる目的で,血中濃度シミュレーション実習を行っている.導入当時は学内コンピューターを用いて実習期間中に限定した実習を行い,一定の学習効果を得た.さらに,2014年からは,学生自らが各自のコンピューターを用いて実習開始前にシミュレーションを行うことにより,自主的学習を促進させ実習内容の理解を深めさせることに成功した.今回,近年の著しいIT環境の変化に起因する様々なシステム上の問題やシミュレーション用ソフトウエアの利用上の制約を解消するため,我々は新たに薬物動態シミュレーションに利用できるWebアプリケーションを構築した.このアプリケーションは,インターネットに接続できる環境下であれば,対応するオペレーティングシステムや時間・場所の制限がなく無料で利用できる.その効果として,これまで各大学において当アプリケーションの新規導入時の課題となっていた購入費用の問題が解決された.従って,医学部における薬理学実習のみならず他の医療系学部や臨床の場における補助的学習手段としても広く活用されることが期待される.

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