2017 年 149 巻 1 号 p. 14-19
薬剤による治療や予防は,超高齢社会における人々のQOLの維持に大きな役割を果たしている.看護職は,医師からの薬物療法に関する指示が,適切に遂行され効果を発揮するまでの最終段階で,責任をもって見届ける役割を担うため,薬剤やその治療に関する正しい理解のもとで対象を支援する必要がある.しかし,昨今の看護学生の準備性の不足として,高等学校までの理系科目の学習不足が指摘され,薬理学に対する苦手意識,臨床実習における知識活用の困難性など,十分な理解がなされないまま看護職として就職していくことが危惧される.本稿では,今後の看護学生への薬理学教育の充実に向けて,看護系大学の置かれている社会的背景や教育上の課題について述べる一方,薬理学担当教員に対しては,学生の状況や能力に合わせた効果的な授業方法の模索や開発を期待すること,看護教員に対しては,その知識や技術の定着を図るための各看護学や臨地実習における授業方法の工夫について,それぞれ提言した.