日本薬理学雑誌
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特集 新規がん治療薬の研究開発
がん治療におけるPI3K/mTOR同時阻害薬の開発現状と展望
塩瀬 能伸
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2013 年 142 巻 4 号 p. 156-161

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抄録

PI3K(phosphatidyl inositol 3-kinase)/mTOR(mammalian target of rapamycin)経路は,細胞の生存プロセスの中心的な役割を担っており,がんにおいては様々な遺伝子変異の結果,この経路が恒常的に活性化し,がんの生存,分化,増殖に深く関わっているとされる.近年,この経路の阻害薬としてPI3K阻害薬,Akt阻害薬,mTOR阻害薬(mTORC1阻害薬およびmTORC1/2阻害薬),PI3K/mTOR同時阻害薬が開発され,大きな注目を集めている.この中で,すでに承認されている薬剤はラパマイシン誘導体テムシロリムスやエベロリムスといった,いわゆるmTORC1阻害薬のみであり,その他の標的薬剤は現在臨床試験中でその資質が検証されている段階である.本稿では,PI3K/mTOR同時阻害薬に焦点を当て,臨床試験状況,注目される併用試験,バイオマーカー研究について紹介する.

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