日本薬理学雑誌
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実験技術
過酸化脂質誘導ウサギ角膜血管新生モデル
中西 孝子植田 俊彦
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2006 年 128 巻 1 号 p. 33-36

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抄録

酸化ストレスは生体内にある不飽和脂肪酸を過酸化脂質へと変化させるとともに,糖尿病網膜症や加齢黄斑変などの原因となるため,過酸化脂質の増加が疾患の原因に関与していると考えられている.この過酸化脂質の一つであるリノール酸ハイドロパーオキサイド(LHP)をウサギ角膜実質に投与した.明らかな炎症所見が無いにもかかわらず,約2週間にわたって,輪部血管から角膜実質に血管新生が生じるモデルを作成した.経時的に摘出した角膜片中にはLHP投与後24時間までに,投与されたLHPは消失した.さらにtumor necrosis factor-alpha(TNF-α),vascular endothelial growth factor(VEGF),matrix metalloprotease-9(MMP-9)活性が6時間から12時間をピークに出現した.投与24時間後に輪部血管から新生血管の発芽が観察された.その後,新生血管はLHP投与14日後まで1日あたり0.24 mmの割合でLHP投与部位に向かって成長し,約3 mmとなった.TNF-α阻害薬,抗酸化作用を持つ漢方薬(柴苓湯)などを前投与した場合,血管新生は抑制されたことより,酸化ストレスの関与が考えられた.しかし,vitamin Eでは抑制されなかったことより,本モデルではTNF-αやVEGF,MMP-9活性だけでなく,それ以外の因子が含まれていると考えられた.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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