日本薬理学雑誌
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実験的慢性肝性脳症(Eck痩犬)に対するラクチトール(NS-4)の改善作用
渡辺 正義尾崎 孝幸莚井 武鵜飼 洋司郎上田 房雄木村 喜代史加藤 正巳松本 敦也古谷 恵美伊藤 小枝山口 和政久木 浩平鈴木 一幸佐藤 俊一
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1995 年 105 巻 5 号 p. 403-413

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抄録

実験的慢性肝性脳症モデルとしてEck痩(門脈・大静脈吻合)犬を作成し,ラクチトールの肝性脳症改善効果を行動,脳波および視覚誘発電位を指標に検討した.Eck痩作成3週目よりラクチト―ルを1日1回,12週間反復胃内投与し,2週毎に行動,脳波および視覚誘発電位を観察,記録した.対照群ではEck痩作成後,時間経過とともにぽんやり状態,動作緩慢状態および昏迷状態を示した後,昏睡状態にまで進行し,死亡する例もみられた.脳波も,時間経過に伴って低振幅徐波化し,ほぽ完全に平坦化する例もみられた.また,視覚誘発電位では各コンポーネントの潜時の延長および振幅の増加傾向が認められた.これに対して,ラクチトール1および3g/kg/dayは対照群でみられた行動異常や脳波および視覚誘発電位の変化をいずれも著明に改善した.以上の結果より,ラクチトールは実験的慢性肝性脳症による多彩な精神神経症状を改善する作用を有することが示唆された.

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